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Users Report ユーザ紹介/第101回
ジビル調査設計 株式会社
変わるコンサルタント業務環境に独自技術で差異化
多彩なFORUM8製品導入、高度化する利用ニーズ
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フォーラムエイトは7月1日、金沢事務所を開設いたします。同事務所は、富山・石川・福井の北陸3県をカバー。当該地域のユーザーの皆様に対する営業および技術サポートの拠点としてはもちろん、各種セミナーの開催などを通じ地域に密着した幅広いサービスを展開してまいります。
そこで今回の本コーナー(「ユーザー紹介」)は「北陸ユーザー特集」と題し、3県にまたがる4ユーザーを取材。地域の特性も反映し、それぞれユニークな事業や研究活動を進める各ユーザーによる最新の取り組みについてご紹介します。 |
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フォーラムエイト 金沢事務所(リファーレ) 金沢駅徒歩3 分 |
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創業以来、福井県に根差した総合建設コンサルタントとして活動してきたジビル調査設計株式会社。実際に、県や国土交通省近畿地方整備局、市町村からの公共事業がほとんどを占め、これまでは道路や橋梁など構造物の設計を主に担当してきたといいます。
今回北陸ユーザー特集で3番目にご紹介する同社は、40年以上にわたる事業を通じ、主として福井県内における各種インフラの整備や保全支援に従事。県内の有力な建設コンサルタントとして実績を積み重ねてきました。
近年、当該地域ではそのような構造物を新設するプロジェクトが減少。代わって、既設構造物の点検や補修・補強などに関する業務の比重が増してくる中で、同社はそうしたシーンで利用するためのさまざまな独自システムを開発。最近はこれらシステムに対する県外からのオファーを受け、システムそのものやそれを利用したサービスを提供するケースも広がりつつある、と同社取締役品質管理部長の宮川清剛氏は述べます。
同社がフォーラムエイト製品を使い始めたのは、20年以上前に遡ります。以来、橋梁関係を中心に、動的非線形解析ソフトを含むさまざまなソフトウェアを利用。また、合意形成プロセスでの活用を狙いに3次元リアルタイムVRソフト「UC-win/Road」も導入、複数の実プロジェクトで効果的に適用されています。
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▲福井県福井市の本社外観 |
▲ジビル調査設計株式会社
取締役品質管理部長 宮川 清剛 氏 |
曹曹洞宗大本山、永平寺の西約12km、ジビル調査設計株式会社の4 階建て本社ビルは永平寺町との境界に近い福井市街地に立地していました。同社が設立されたのは1970年。現在、本社のほか京都、奈良、神戸の3都市に事務所を置き、45名(2013年6月時点)の社員が配属されています。
同社は県内を中心に、建設コンサルタント業務や補償コンサルタント業務、地質調査および測量業務を幅広く実施しています。そのうち、設計業務で主な対象とするのは、道路法面や軟弱地盤対策を含む道路、橋梁、上下水道、河川、砂防および海岸の設計。また、電線共同溝の設計や景観整備、構造物の補修・補強設計、融雪設備の設計などでも数多くの実績を誇ります。さらに、合意形成業務、橋梁点検調査、コンクリート構造物(土木・建築)のクラック調査やサーモグラフィ調査、外壁診断など多彩な業務をカバーしています。
ただ、同県でも橋梁や路線の新設といった公共事業が少なくなり、今後もかつてのような状況が戻ることは望めない流れにあるのが実情といいます。実際、同社では近年、橋梁の点検や補修、耐震補強のための設計がメーンになってきています。
そうした背景を踏まえ、同社では従来からのインフラの整備や保全支援に関連する業務に加えて、地理空間情報システム(GIS)など最新の情報通信技術(ICT)をベースとするさまざまなシステムを開発。それらを利用した点検や調査、測量などの業務にも力を入れています。
「橋梁点検カメラシステム 視る・診る」
増大する道路ストックがもたらす劣化損傷の危険性、あるいは想定される膨大な更新費用の問題に対するソリューションとして、国土交通省は道路橋の予防保全を推進しています。これは、損傷が深刻化した後で大規模な修繕を行う従来型の事後保全から、損傷が軽微なうちに修繕する予防保全に転換することで、ライフサイクルコストを縮減するとともに、橋梁自体の長寿命化に繋げようというものです。
同社はそのような施策に先駆けて、橋梁設計に長年携わってきた知見を基に、橋梁の劣化状況に対する近接目視点検を支援する橋梁点検カメラシステムの開発を独自に進めてきました。段階的な改良を重ね、その3
代目に当たる「橋梁点検カメラシステム 視る・診る(みる・みる)」は、水平・鉛直360 度の旋回機能を有する自走式台車にハイビジョンカメラを搭載し、カメラユニットが水平アーム上を前後に移動しながら点検。システムの操作は橋面上に設置する操作ユニットで遠隔制御する仕組みです。
点検画像データはネットワークを通じリアルタイムに遠隔地へ配信、事務所にいながら高精度な点検や判断を行うことが可能。システムがコンパクトなため、橋梁点検車を利用できないような橋梁に対応し、橋梁形式を選ばず、狭隘部にもカメラを挿入して点検できるのが大きな売りです。同システムはNETIS(新技術情報提供システム)に登録。こうしたニーズを抱える全国の現場からのオファーが広がりつつあるといいます。
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▲橋梁点検カメラシステム(パンフレットより) |
建築物外壁および法面の劣化損傷診断
建築基準法の改正により、2008年4月から特殊建築物の定期報告制度に関する要件として、外壁への全面打診等による調査を求める記述が加えられました。それを受け、同社は外壁の全面打診等の調査方法として安全性や経済性に優れた新たな手法を開発・提案しています。
これは、赤外線サーモグラフィと、トータルステーションを用いて3 次元位置座標計測によりひび割れ位置(長さ・高さ・幅)を正確に計測する非接触ひび割れ計測システム「KUMONOS」とを併用。足場などの仮設設備を設置することなく、遠隔地から非接触で、しかも短時間かつ少人数で広範囲にわたる外壁の劣化損傷を診断。診断結果は熱画像として視覚的に記録できるほか、計測データを基に解析ソフトを使い図面作成することも可能です。
現在はこの技術を応用し、既設の吹付モルタル法面に対する調査手法を開発。これについては、既に県内を中心とする数ヵ所の現場で適用されており、県外からも引き合いが来ている、と同社技術部次長の南出重克氏は語ります。
「いちはや」システム
同社は昨年、公共事業のプロセスにおけるスマートフォンの活用可能性に着目(同社技術部リーダーの小西由哲氏)し、業務の効率性向上を図る取り組みの一環として、「いちはや」システムを開発しています。これは、画像と文字情報をデジタル地図上に表示し、遠隔地で生じた事故や災害の状況をリアルタイムに(いち早く)把握することを可能にするものです。
例えば、警報を受けて、担当者が落石や除雪作業などの現場へ行き、スマートフォンの専用アプリを使い指定秒数間隔でそこの画像データを取得。データは、サーバを介し地方自治体のWebGISを利用して事務所などのパソコンに表示され、現場の位置とリンクした状況がリアルタイムに把握できるようになります。
また、同システムを自治体道路パトロール車に搭載、例えば、3秒間隔で通常時の道路状況のデータを取得し、帰庁後にそれらをデータベースに蓄積。災害時にはそれを基に過去の状況を確認するといった利用など、さまざまにカスタマイズすることも出来ます。
その他のシステム
これらの他に同社では、(財)道路保全技術センターの道路防災点検要領の書式に基づく「道路防災台帳管理システム」、複数年にわたる公共事業の用地交渉や用地取得に特化してすべての情報を一元管理する「事業管理システム」、高齢者に関するさまざまな情報を位置情報とともに管理する「高齢者福祉支援システム」などを開発。それぞれニーズを受けて機能強化を進めています。
ジビル調査設計株式会社で初めて購入されたフォーラムエイト製品は「仮設構台の設計」や「BOX カルバートの設計」で、1990年代の初頭、他社製品も含め同社が橋梁関係のソフトウェアの充実に努めていた頃でした。その後も橋梁関係のソフトを中心に拡充を進めてきており、現在はそのうち当社製の占める比率が最も高いといいます。
その背景について宮川清剛氏は、この間の道路橋示方書改訂などへの対応の速さと、そのことも含めたソフト自体の使いやすさを挙げます。
また、当社の動的非線形解析ソフトを使って作業することが多い同社技術部次長の宮下孝義氏は、他社製と比べ、いろいろな条件を考慮できるその仕様構成とソフトとしての完成度の高さに言及。とくに、道路橋示方書の平成8年(1996年)改訂の際には各社の対応が時間を要したことから、自らExcel
などのソフトで補って何とか凌いだ経験を振り返りつつ、平成24年(2012年)改訂における当社ソフトの対応の速さは評価されました。
「動的解析は橋梁の設計に欠かせないツールですが、高度な解析になるため、使い方を誤ると結果が大きく変わってしまいます。」その点について宮下孝義氏は、使う側として勉強を重ねていくしかないとしながら、計算結果の妥当性の確認に関しては今後の大きな課題と位置づけます。
一方、合意形成を図る際、地元の人々に理解してもらうための良い方法がないか、と模索。3 次元モデリングやアニメーションの作成を行うための各種ソフトウェアを検討する中で、UC-win/Roadのデモを体験。合意形成の場に同行してサポートできないようなケースでも、事前にしっかりデータ作成しておけば容易な操作でリアルな表現が可能になる特性を実感した、と小西由哲氏は導入の経緯を述べます。
その後、電線地中化に伴う市街地の整備改善事業ではまず現状を再現し、複数計画案をいろいろなアングルから可視化。また、高架橋の建設に当たってはそれによる景観や日照時間への影響をシミュレーションするなど、合意形成のための効果的な説明資料として活用されています。今後はさらに、広範囲な地形などの経年変化、あるいは前述の法面の劣化損傷状況に関するデータなどとリンクした新しい使い方を探っていきたいとしています。
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▲左から、技術部次長の南出重克氏、技術部リーダーの小西由哲氏、技術部次長の宮下孝義氏 |
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▲事務所にて記念撮影 |
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▲電線地中化に伴う市街地の整備改善事業では、UC-win/Road を用いて地元の人々との合意形成を図っている |
(執筆/取材:池野 隆) |
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