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Users Report ユーザ紹介/第109回

株式会社 竹中土木
技術・生産本部 技術部
全社的な技術課題やCIMに対応、様々な独自技術の開発にも力
UC-win/Roadベースの「3次元開発設計支援システム」を フォーラムエイトと共同で開発

 User Information
株式会社 竹中土木
URL ●https://www.takenaka-doboku.co.jp/
所在地 ●東京都江東区
事業内容 ●全社的な技術支援、技術的課題への対応、営業支援のための技術情報提供、知的財産関連業務


「ゴルフ場や宅地の造成といった土地開発の設計業務をCIM(Construction Information Modeling)技術で革新したい」

ゴルフ場の改修工事を契機として、造成工事の完成後に場内の地形がどう変わり、利用客の視点で景観がどう見えるようになるのか、設計段階から3次元(3D)VR(バーチャルリアリティ)により再現して示したいと着想。以来2か年(2013年度・2014年度)にわたり、3DリアルタイムVR「UC-win/Road」をベースにフォーラムエイトと協力して開発を進めてきた土地造成事業向け「3次元開発設計支援システム」がこのほど完成。これらの取り組みを統括してきた株式会社竹中土木 技術・生産本部技術部長の平井卓氏は一連の活動を振り返るとともに今後の展開に触れる中で、その開発成果の多様な分野における活用への期待をこう述べます。

今回ご紹介するユーザーは、幅広いプロジェクトの土木工事に携わる株式会社竹中土木。そのうち、同社の基盤となる技術を支える「技術・生産本部」にあって、全社的な技術課題への様々な対応を担う「技術部」に焦点を当てます。

同社はフォーラムエイト製品のほぼ全般に及ぶライセンスを保有。特に、当社の鋼管矢板井筒基礎の設計を支援するプログラム「3次元鋼管矢板基礎の設計計算」(2008年初版リリース)は、同社向け受託開発サービスを基に製品化された経緯があります。そうした流れを受け、早くからUC-win/Roadを導入。それを応用する形で前述のような、土地造成事業で必要となる各種機能を備え、設計の違いを反映した施工成果を効果的かつ効率的に3D・VRで表現できる新システムの共同開発に繋がっています。


▲技術・生産本部 技術部長 平井 卓 氏



 広範な土木工事事業向け 技術支援をリード

江戸時代初期の神社仏閣造営業に起源を発する「株式会社竹中工務店」を中核とし、建築や建設、土木に関わる各社(建設事業8社、マネジメント・エンジニアリング事業6社)から構成される「竹中グループ」。この建設分野ではわが国有数の歴史を誇るグループにあって、広く土木工事事業を担うのが「株式会社竹中土木」です。

同社の創業は、1937年に結成された「共栄会」に遡ることが出来ます。その後、1941年にこれを継承する形で「海外土木興業株式会社」を設立。戦後の国土復興事業への参画などをばねに組織再編や業容拡充を重ね、1973年には現行の社名に改称しています。

今日では本社 東京本店および大阪本店のほか、北海道・東北・関東・国際・横浜・名古屋・広島・四国・九州の各支店に加え、これら管内の複数営業所、PT.竹中インドネシアといった事業所を展開。900名近い従業員がそれらの拠点に配置されています。

同社は土木工事や建築工事、不動産関連、地域・都市・海洋開発、コンサルティング業務など広範な業務をカバー。携わった事業を通じて施工された構造物は「作品」と位置づけ、それらはダムや鉄道、道路・トンネル・橋梁、環境・上下水道、土地造成、港湾・河川、エネルギーなど多岐にわたります。

その中で平井氏は、技術・生産本部の技術部および技術研究所の技術開発部、それぞれの部門長を兼務。前者は全社的な技術支援という観点から、品質上のトラブルの予防保全、技術的な問題点への対応、営業支援のための技術情報の提供、知的財産関連業務などを実施。また後者は竹中工務店と合同の研究所において、竹中土木のニーズをより反映したテーマを各研究員が個別に設定し技術開発に努めています。

一方、同社は新しい技術や工法の開発にも注力。平井氏はその近年の主な成果として、1)東日本大震災(2011年)後に開発した、液状化対策や地盤改良のため住宅地など狭隘なスペースに格子状地盤改良体を構築する際、小型化した施工機械で大型機と同等の成果を実現する工法、2)トンネル工事で得られる各種計測情報を基に切羽前方の地山状況を的確に判定できるシステムの構築・適用に言及します。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲UC-win/Roadをベースとした3次元開発設計支援システムフロー



  現場のニーズとCIM対応が連動

技術に関わる全社的な課題という意味で、CIMは平井氏が現在対応を求められている大きな課題の一つです。

そのような折、もともと同社が得意とする土地造成事業の一環として取り組まれたゴルフ場の改修工事で、「どこをどう変えれば、例えば実際にティーグラウンドに立って(プレーする)お客様にフェアウェイがどう見えるのか」あるいは「設計段階で改修後の地形や景観がどうなるのか」を事前に発注者側に把握・体感してもらうニーズが浮上しました。

それまでは例えば、発注者から設計の修正を求められると、自社の担当者が一旦オフィスに戻って図面を作成。メールで送ったとしても時間のズレが生じてしまい、お互いの意思がうまく通じにくい側面は避けられませんでした。すなわち、なかなか顧客と同じテーブルに着いて、その場でリアルタイムに話が出来ない煩わしさがあったといいます。

また、たとえ3D CADなどを使い設計したデータをそのまま図面の形にして顧客に持って行ったとしても、実際にそれでどう見えるようになるのかが詳細には伝わらず、設計変更についての判断が容易にはつきかねました。そこで、そのデータを基に3Dの画像を別途作成して顧客に持参するといった作業も求められました。

「(従来のままでは)なかなか対話が進まないので、ノートPCやタブレットを使い、お客様と直接対話しながらいろいろなものをつくっていくことが可能なツールとして何か出来ないか、と考えられるようになりました」

つまり、国土交通省が主導するCIMに受動的に対応するというのではなく、現場からのニーズに駆動される形でCIMの考え方を自ら体現するアプローチが動き始めた、と同氏は振り返ります。

その際、同社東京本店の技術・設計部では既に他の事業向けにUC-win/Roadや3D CADが導入されていたことから、これらを駆使する新しいシステムを開発。今回システムでは設計段階での利用がターゲットとされているのを、さらにその先の自動化施工にも繋がる技術への発展も視野に入れた構想が描かれました。



  「3次元開発設計支援システム」 の開発

この、土地造成事業の設計段階から改修後の地形や景観がどのようなものになるのかを顧客側に可視化して示したいとの発想を受け、UC-win/Roadをベースとする「3次元開発設計支援システム」の開発が2013年度にスタートしました。

3D・VR上で地盤を粘土のように自在に操りながら、3Dデータの変更に応じた地形の変化を様々なアングルから確認でき、ゴルフ場特有の風景もリアリティ豊かに再現できるよう配慮されました。また、グリーンなどの微妙な勾配を数値情報でVRに重ね合わせて表示できるほか、地形を変化させながらのプレゼンテーション、変化させた地形をフィードバックする形によるCAD化にも対応。客先での打ち合わせ中にも瞬時に地形の変化を的確に示すことが可能になっています。

初年度はシステム開発の発端となったゴルフ場改修工事を抱えていた東京本店の技術・設計部が中心となったのに対し、2014年度は宅地造成事業で同様な可視化ニーズがあった大阪本店の技術・設計部も参加。勾配形状の任意形状入力への対応、地形処理の改善、ゴルフ場造成関連や土量計算などの機能拡張が図られました。

特に地形標高を変更した時にワイヤーフレームが出来るようにしたいとの狙いから、サーフェスの機能を追加。地形選択時に任意の曲線で選択し、自動的にメッシュを補完。また、標高変更時に高さごとに航空写真上でテクスチャを変更できるようにし、標高の変更を視覚的に分かりやすくするとともに、標高変更箇所の土量計算も可能です。

「当初はタブレットでの操作を(主に)イメージしていました」。単にタッチして入力したり、見せたりするという利用シーンをとらえると、タブレットの方が実用的と考えられたのに対し、実際にはマウスを使った方がやりやすいことが分かるなど、システム開発の過程では様々な気づきもあり、それらを反映。平井氏は全体として「思った以上のモノが出来たのでは」との思いを述べます。

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▲地形モデルの生成、土量計算機能


  システムの活用と今後の展開

同社では、前述のように早くからUC-win/Roadを導入。歴史的建造物での土地造成事業など景観が重視されるケースが増えてきていることもあり、リアリティのある3D・VRでしかも人や風などの動きも再現できる、その特性は社内で高く評価されてきた、と平井氏は語ります。

一方、災害現場などでは図面が全くない状況下で目的のモノを一定の期間に、二次災害を生じないよう安全につくることが求められます。そのため、例えば、ドローン(無人航空機)などを使い上空から測量。そのデータをリアルタイムに自動運転の施工機械や事務所の設計担当者に送信し、造成工事に即座に反映させるなどの将来展開が期待されます。そのような場面でUC-win/Roadが人と機器とのインターフェースとなるのでは、と同氏は位置づけます。

今回のシステム開発を通じ、同社が目的とした一定の機能を実現。今後は同システムの適用事例の広がりを目指すとともに、その活用メリットを発注者へのアピールに繋げていきたいと説きます。


▲技術・生産本部の皆様






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