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カラオケ店で起こった火災の避難シミュレーション |
「buildingEXODUS」と「SMARTFIRE」を連携させた解析 |
これまでの研究実績では、英語での掲載論文が19編、研究財団の登録論文が28編、海外発表論文が61編、そして国内発表論文が66編と、精力的な研究活動がうかがわれる。
火災と避難のシミュレーションを統合高精度の解析で建物の安全性を高める
韓国では、火災時の避難シミュレーションを行うのに、火災と避難のシミュレーションを別々に行い、その結果を設計者が見比べながら安全性を判断する「ノン・カプリング法」が主流になっている。
しかし、この方法だと設計者による個人差が出やすいほか、火災の影響が煙によって視界が妨げられることに重きがおかれることが多い。
一方、buildingEXODUSとSMARTFIREを連携して解析を行うと、火災による煙だけでなく温度や放射熱、有害物質などの影響も考慮できる。火災を避難行動に対する制約条件を考慮しながら解析できるので、より実際に近い、高精度な結果が得られる。そして個人差もなくすことができるのだ。
こうした火災・避難シミュレーションの精度を上げるためには、人々が避難時にどのような行動を取るかや、避難時の移動速度などをデータとしてもっておく必要がある。
そこでチョイ氏は2014年、合計8個の交差点を含む迷路のセットを用意し、117人を対象に実物大の避難実験を行った。その狙いは、年齢や性別によって交差点の種類別に、歩行速度や進行方向、意思決定の時間などの実際のデータを収集することにあった。
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実験に使った迷路のセット |
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(左)視線の動きを観測するために使われたアイトラッカー付きヘルメット
(右)迷路の分岐部にはカメラを設置し、人々の避難行動を記録した人々の避難行動を記録した |
避難時のリーダーシップの有無 ドアの開閉方向も避難時間に影響
人々が避難行動をとるまでの時間や誰がリーダーシップをとるのか、避難を始めた後にエレベーター、エスカレーター、階段のどれを選ぶのかという問題や、煙の中を逃げるときに煙の濃度によって歩行速度がどう変わるか、という実際の非常時に人々がとる行動や心理状態は、実験時にアンケート調査も行ってより深い分析を行っている。
「火災安全工学は技術だけではありません。社会的、経験的な側面も重視する必要があります」とチョイ氏は言う。
チョイ氏の研究は、さらに避難行動を詳細な部分まで追跡している。例えばドアの種類や開閉する方向や、避難口への誘導灯の色、避難誘導看板とドアノブの位置関係などだ。これらの詳細なデータを得るため、チョイ氏は現場での実験のほか、避難実験データ収集システムになどを活用し、丹念にデータの精度を高める研究活動を続けている。
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<一致, C> |
<中立, N> |
<不一致, I> |
ドアノブの位置と避難看板の位置のずれによる影響も実験 |
コンピューターシミュレーションを活用し、韓国の火災安全工学界を背負うチョイ氏が目指すのは、データベース作りだ。
「韓国人は1〜2分しかエレベーターを待たないなど、韓国人と日本人の避難行動には大きな違いがあります。buildingEXODUSなどによる解析に使える韓国用のデータを自分の手で作っていくのが、これからの目標です」とチョイ氏は将来の夢を語った。
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脳波測定による検証も行っている |
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