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ユーザー紹介/第121回
東洋技研コンサルタント株式会社
技術第4部

新設橋梁の設計が主業務、近年は既設橋の拡幅事業などにもノウハウ蓄積
多様な当社製ソフトを導入、今後のCIM対応視野に更なる活用可能性を構想

東洋技研コンサルタント株式会社
URL  http://www.toyogiken-ccei.co.jp
所在地 大阪市淀川区
事業内容 : 道路、橋梁、河川、鉄道、街づくりなど広範にわたる建設コンサルタント業務、それを支援する測量および地質調査業務

技術第4部長 田代信雄 氏
技術第4部 技術課長 濱田良平 氏

「我々の時代は(2次元の)CADですけれど、その一つ前の世代は手描き。ちょうど(フェーズが転換する)境目に私たちはいました。今の人たちはおそらく(この先、設計を行っていく上で)3次元(3D)のCADを描けなくてはいけなくなります。その辺りが一番の課題では(と考えています)」

建設の調査・設計段階から3Dモデルを導入し、施工、維持管理の各段階における3Dモデルに連携・発展させるという仕組みを介して、関係者間で情報を共有。それを活用し、例えば、設計段階から様々な検討を行うなどすることで、建設のライフサイクル全体で効率性や高品質を実現するシステムの構築に繋げようという「CIM(Construction Information Modeling / Management)」。橋梁を中心とする設計業務に長年携わる自らの経験を踏まえ、今後本格化してくるCIMへの対応を視野に、東洋技研コンサルタント株式会社技術第4部長の田代信雄氏はそのベースとして必要な3Dの図面をいかに簡単に作成でき業務の効率化が図れるかがカギになってくる、との見方を述べます。

今回ご紹介するユーザーは、道路、橋梁、河川、砂防、まちづくり、建設環境などの分野で多様な建設事業の計画・設計・保全業務を行う東洋技研コンサルタント株式会社。その中でも、新規に建設される橋梁の設計を担当する「技術第4部」に焦点を当てます。

同社では、20年以上前から「UC-1シリーズ」をはじめ、3D積層プレート・ケーブルの動的非線形解析「Engineer's Studio®」、3D・リアルタイムVR「UC-win/Road」なども含む、フォーラムエイトの多数ソフトウェアを導入。技術第4部では特に、UC-1シリーズの橋梁下部工や基礎工分野を中心に関係する各種ソフトを利用されています。



 新設道路橋の設計をメインに近年はペデストリアンデッキや
 拡幅系もカバー

東洋技研コンサルタント株式会社の起源は、塩見設計事務所として開設された1956年に遡ります。その後、1963年には大阪設計コンサルタンツ株式会社を設立し、1972年に現行の社名に改称。以来、業容の発展とともに体制を拡充。現在は本社(大阪市)の下、札幌・東京・名古屋の3支社、青森・千葉・神奈川・埼玉・静岡・豊田・多治見・三重・福井・滋賀・京都・神戸・奈良・和歌山の14営業所を展開。それらに124名の社員(2018年1月現在)が配置されています。

本社には管理部門のほか、技術本部下の4部に支援業務推進部を加えた技術系5部門を構成。そのうち、技術第1部は道路の詳細設計や予備設計、技術第2部が道路の計画、公園や駅前広場などまちづくり、河川の設計、技術第3部が橋梁の保全・補修、技術第4部が新設橋梁の設計をそれぞれ担っています。

技術第4部の皆さん
画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
【橋梁】首都高港北JCT ランプ橋の設計 横浜市都筑区 首都高速道路 神奈川建設局

今回お訪ねした技術第4部は、橋梁の中でも新規の道路橋の設計がメイン。ただ近年は歩道橋や駅前広場などでのペデストリアンデッキに関する案件も増えてきています。そこでは景観設計や公園との一体設計が求められることもあり、他部署と連携する体制が取られている、と田代氏は語ります。

橋梁設計を巡るもう一つの特徴的なトレンドが、既設橋を有効利用した設計業務です。たとえば既設の橋梁(現道)の幅員を広げようというプロジェクトでは、新設橋を建設する際と違い、まず既設の情報を把握した上で、「既設と一体化するか」あるいは「構造的に分離するか」を検討。結果的に現道を活かしたままで拡幅するという、前者のアプローチを採るケースが近年増加する傾向にあるといいます。

「(既設橋の)拡幅は新設橋(の設計)より難しい(面がある)かな、と思っています」

たとえば、既設橋との一体化を図る場合、今ある橋の幅員を広げる段階で応力のバランスが変わってしまうなど、既設への少なからぬ影響が生じがちです。つまり、既設橋は当然、設計年次に応じた古い基準に基づいているのに対し、新たに拡幅する部分は最新の基準に則らなければなりません。両者が一体化した後、今度は一つの橋として評価するため、ケースによっては既設の桁を補強したりすることが求められます。しかも、既設橋設計当時の資料が必ずしも提供されるとは限らないのに加え、既設の劣化状態も精査する必要があるなど、新設橋より手間のかかる要素が多い、と技術第4部技術課長の濱田良平氏は解説します。

一方、幅員を広げるに当たって既設と新設を構造的に分離できれば既設橋への負担増加がなくなり、補修補強を最小限にでき、コスト的にも安く済むこともあります。そのため同部では、技術提案に際してまず既設橋に負担増加とならない構造を検討。それが無理であれば、既設と一体化する構造を試行するといった手順が取られています。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
【橋梁】首都高港北JCT ランプ橋の設計 横浜市都筑区 首都高速道路 神奈川建設局


 多彩な当社ソフトを導入、着実に高まる比重

橋梁の詳細設計や予備設計を行う技術第4部における橋梁上部工や下部工、基礎工、構造解析関連、そのほかの部署における道路土工関連、港湾関連など「UC-1シリーズ」の各種ソフトウェア、さらにUC-win/Road、あるいはUC-win/FRAME(3D)やEngineer's Studio®などFEM解析関連に至るまで、同社では多彩なフォーラムエイト製品を導入しています。

橋梁設計の実務をリードし、他社製ソフトと並行して自ら上下部工や基礎工、耐震設計関連を中心に当社ソフトを利用している濱田氏は、フォーラムエイト製品の使いやすさ、上部工と下部工など分野を越えたソフト同士の連携、モデル化機能への早くからの対応といった特性を列挙。そうしたことへの評価が結果的に社内での当社製品ラインナップの拡充を促してきたと振り返ります。

これに対し田代氏は、同じ作業への利用を目的に異なる会社の複数ソフトを導入している中で、フォーラムエイト製の比率が高まってきた背景について他にはない、いろいろなケースに対応可能なその汎用性に注目。ユーザーからの要望への対応が速く、そのようなプロセスで培われたノウハウの蓄積が使い勝手が良く、汎用性の高いソフトへと鍛え込んできたのではとの見方を示します。

「使い慣れているからかも知れませんが、視覚的に分かりやすい」と、濱田氏は当社ソフトへの印象を表現。よく使うという基礎工や橋梁下部工のソフトでは、数字を入力していくと立体モデルが表示され、位置関係などをリアルタイムに視覚的に確認しつつ作業でき、それにより手戻りを防げるメリットを説きます。

また、UC-win/Roadはこれまで技術第2部を中心として、交差点改良の安全確認やインターチェンジの合流部完成後の交通シミュレーションなど提案型事業における利用が目立ちます。特に近年は、発注者や地元住民ら関係者間の合意形成を図るため出来るだけ分かりやすい資料の作成が重要になってきていることもあり、技術第4部でもUC-win/Roadの活用機会の広がりが見込まれています。

田辺西バイパス稲成川橋他道路詳細設計業務
和歌山県田辺市 国土交通省近畿地方整備局紀南河川国道事務所
画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
道路計画ではUC-win/Roadを使用したVRシミュレーションも活用

さらに前述した、既設橋を拡幅するプロジェクトに当たっては、拡幅用の専用ソフトがないため、上部工の設計では条件整理をした上で既存ソフトを使用。一方、下部工の設計に関して濱田氏は、既設の下部工が現行の基準に照らして安定性を確保できず、しかも施工時の制約条件が厳しくて簡単には補強できない橋台のケースを例示。一般的な橋台設計ソフトは上から下まで土圧がかかることを前提としているのに対し、当社の「橋台の設計」は「これだけの範囲は土圧をかけないというように、(こうしたプロジェクトで用いられがちな)土圧軽減工法を意識したソフトになっており、(必要な)任意の設定をしやすい」と評価。加えて、スタンダードな橋梁ばかりでなくイレギュラーな橋梁の設計、基礎の補強の設計など拡幅事業に適用可能な機能が多いとの観点を述べます。



 CIM対応の課題と今後の期待

「現場先行でi-Construction(アイ・コンストラクション)が進みだし、(その一環として)ICT(情報通信技術)施工絡みで設計側でも徐々にその下地となる3Dの立体モデルを作っておき、それを施工段階に流して出来形管理などに活用するといった事例が増えてきています」

とはいえ、その先ではターゲットとなるCIMを視野に入れつつも、濱田氏は自身らの橋梁設計と土工とのスタンスの違い、最終的にはメンテナンス段階まで3Dモデルを活用しようというCIMとの隔たりに言及。今はまだそのとっかかりとして、3Dモデルによる配筋の干渉チェックを案件に応じて行ってきているところ、と語ります。

また田代氏は、3DCADで図面を描くのに時間を要しているのが現状と指摘。CIMが必須となってくる今後に向け、それをいかに効率よく3D化していけるかが一番の課題と位置づけます。

つまり、CIMの仕組みの中で、例えば施工者は3Dモデルを使うことにより様々なメリットが想定されます。その上流側で下地(3Dモデル)を作る建設コンサルタントにとっても、生産性の向上が期待される反面、ケースによっては手間や時間を要する作業が増えることもあり、対応が大変だというイメージも払拭できていません。

「新しい技術に対しアンテナを高めながら、何か良さそうな新技術があれば積極的に取り入れていって、より良い提案(に繋げること)が出来ないかと常に考えています」

田代氏はこのようにi-ConstructionやCIMへの対応を含む同社としてのスタンスに触れながら、そこでのフォーラムエイト製品の活用可能性に期待を示します。

 2017年度 表彰実績

「国道24号井関川橋修正設計業務」
国土交通省近畿地方整備局京都国道事務所長表彰・優秀技術者表彰

「御所南PA他詳細設計業務」
国土交通省近畿地方整備局奈良国道事務所長表彰・優秀技術者表彰

「安全施設検討及び事故危険箇所詳細設計」
東京都第六建設事務所(優良工事等感謝状)

「県道709号事業事後評価分析業務委託」
神奈川県県西土木事務所 小田原土木センター

表彰状

執筆:池野 隆
(Up&Coming '18 春の号掲載)



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